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夢追い人と結婚できる?明治時代のとある格差婚のお話

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2016/05/16 Mon

Gow!Magazine

格差婚のお話

「彼氏が夢追い人のフリーターで、収入はわたしの半分......。このままじゃ"格差婚"になっちゃう!!」
なんて考えて、結婚を思いとどまっているあなた。
本当に彼氏を愛しているのなら、迷うことなんてないはず。

人生は先が見えないから面白い

将来が不安? だったら、あなたの手で彼氏を一人前にすればいいじゃないですか。
明治時代の名芸妓、川上貞奴(かわかみ さだやっこ)はそう考えたから、最高の人生を歩めたのですよ。

川上貞奴は、日本橋の大店だった越前屋の娘として生まれ、大切に育てられましたが、明治維新の激動で家業が傾き、7歳にして芸者置屋の養女に。
母親譲りの美貌と育ちの良さで才覚を発揮し、日本一と評判をとる一流芸妓に成長します。

そんな貞奴が熱中したのが、芝居見物。
とくに、世相をおもしろおかしく風刺した、川上音二郎(かわかみ おとじろう)の舞台に魅せられます。
音二郎は職を転々としながら政治活動をし、官吏侮蔑罪などで百回以上も検挙されている、いわば"奇人"。
しかし、それまでお座敷でインテリの男ばかりを相手にしてきた貞奴には、その破天荒な性格が新鮮で、一瞬にして恋に落ちてしまいます。
そしてここに、世にも不釣り合いな"格差カップル"が誕生したのです。

貞奴は結婚後も音二郎の演劇活動を支えるため、芸妓の仕事を続けます。
しかし、お座敷では政財界の大物たちに、音二郎をバカにされる日々が続きます。
悔しさに歯噛みする貞奴は、「愛しい男を、このまま終わらせてなるものか」と、音二郎を大物にする決心をします。

そんな音二郎の夢は、政治家になることでしたが、総選挙で二度落選すると、やぶれかぶれになり、貞奴に「小舟に乗って、ふたりでアメリカに渡ろう」と無茶な計画を持ちかけます。
もちろん、この計画は大失敗し、ふたりの無謀な船旅は散々な結果に終わります。

ところが、この事件が面白おかしく報道されたことで、アメリカ公演の話が決定。
ふたりは川上座という劇団を結成し、サンフランシスコへと渡ります。

サンフランシスコに渡ったものの、女性役まで男性が演じる当時の日本の演劇は、現地の人々にまったく理解されませんでした。
その上、講演の費用を興行師に持ち逃げされ、一座はホームレスにまで身を落としてしまいます。

餓死寸前で考える力すらなくなったのでしょう、音二郎は貞奴を舞台にあげ、当時流行していた『ベニスの商人』を、でたらめな英語で演じさせることを思いつきます。
疲労と空腹の極限で、『ベニスの商人』らしきものを演じる貞奴。
ついには、舞台の上で失神してしまいます。

ところが、この舞台が「ナチュラルで鬼気迫る名演」と大絶賛!
あれよあれよと言う間に、貞奴はスターダムにのし上がり、世界を席巻するほどの大女優となるのです。

大成功を収めて帰国した音二郎は、新劇に対抗する「正劇」を発足。
日本演劇界のリーダー的存在となります。
また、貞奴も日本初の"女優"として活躍。
それまで女性に閉ざされていた演劇の世界を塗り替えたのです。

明治44年、過労のため病気になった音二郎は、本人の希望で、劇場の舞台の上で息を引き取ります。
破天荒で無鉄砲な音二郎でしたが、貞奴にとってはどんな悲惨な状況でも陽気な、頼もしい夫でした。

もしも貞奴が「音二郎が貧しい芸人だから」という理由で結婚していなかったら、これほど劇的な人生にはならなかったことでしょう。

人生は先が見えないから面白い、という考え方もあります。
彼氏がフリーターでも、本当に愛し合っているなら、支えあって楽しい人生が送れるはず。
思いきって、籍を入れてみてはいかがでしょうか。

Photo by Jordan Chan

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