結婚・結婚準備

マンガ家小栗左多里さんに訊いた!結婚式のしあわせの作り方インタビューvol.05

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ご自身と外国人のパートナー、トニーさんとの微笑ましい日常を描いた『ダーリンは外国人』で大人気のマンガ家、小栗左多里さん。今は子育て真っ最中、という小栗さんに「結婚」について、マンガには書かれていないホンネまでお伺いしてきました!

マンガ家 小栗左多里(おぐりさおり)さん

小栗左多里さん

岐阜県生まれ。95年、月刊『コーラス』でデビュー。著書に『ダーリンは外国人』(メディアファクトリー)、『ダーリンは外国人2』(メディアファクトリー)、『ダーリンは外国人withBABY』(メディアファクトリー)、『ダーリンの頭ン中 英語と語学』(メディアファクトリー)、『さおり&トニーの冒険紀行 オーストラリアで大の字』シリーズ(ヴィレッジブックス)、『めづめづ和文化研究所 京都』(情報センター出版局)など多数。
2010年春、映画「ダーリンは外国人」が全国公開予定。
→小栗左多里公式サイト

『ダーリンは外国人』が大反響を呼んだ小栗さんですが、とっても気になるおふたりのなれそめが4コマなんですよね。トニーさんの第一印象など、具体的ななれそめをお伺いしてもいいですか?

4コマ漫画

「打てば響く」
会話のキャッチボールセンス

本当は、恥ずかしかったのでサラッと4コマで書いたんですけどね(笑)最初に見たときは"おじさん"。その頃は、まったく男性としては見ていなかったです。でも、トニーの言動は、今まで自分の周りにはいなかったタイプのものだったので、人間的には興味を持ってましたよ。世界のこともよく知っているし、話していると楽しい。ただ、彼は完ぺきな人間ではないので、「日本でこうするためにはこうしたほうがいいよ」というようなアドバイスをしたりして、"活動を支える友人"としてつきあってました。

ちょうどその活動が終わる頃、私自身、マンガ家としてデビューできるかどうかの瀬戸際の時期でもあって。年齢的にも最後のチャンス!(小栗さん当時27歳)と、彼の誘いを断りつづけて、夜も寝ないでがんばってマンガを描いた。そして、とうとう描き上げたときに、会いたいな、って思ったのが彼だったんです。ちょうどその時、彼からお誘いがあったので「...じゃあ会おっか」ということに。映画では真央ちゃんとジョナサンが演じる素敵なラブストーリーのくだりがありますが、実際は、トニーの押しによって交際が始まりました。ここ、重要ですから(笑)。そして、ふたりで会っているうちに、「打てば響く」というか、話していると、どんどん会話が発展していくのが面白いなぁ、と感じるようになっていったんです。

ちなみにプロポーズは?

プロポーズ、されましたよ。一緒に暮らしてずいぶん経ってからですが、突然。英語とスペイン語とポルトガル語と何だっけな?何カ国語かで言ってました(笑)答え方も教えてもらって。

外国人との結婚に、周囲の反対などはありませんでしたか?

小栗左多里

結婚は個人と個人の問題
大切なのは色眼鏡で見ないこと

最初、母がとても心配していたみたいなんですが、入籍までにかなり時間があったので、会うまでに「こういう人なんだよー」と話をして、それから会わせたりしてました。というより、私自身が家族の反対っていうのはまったく問題視していなくて、家族より当然彼をとる、って思ってたんです。今思うとやや自分勝手なのですが、家族と比べて「こっちをとる!」という存在(トニー)ができたからこそ結婚した、と。それまでまったく結婚願望なかった私が「結婚したい!」って思うのは、彼が"運命の人"だからなのでは、と。

結婚となると"顔が好き"とか単純なものではなくて、自分と合うかどうかが問題ですよね。日本人でもこんなに千差万別なんですから、最初から「この人はこういう人」と思ってしまうのは"色眼鏡で見る"ってことであって、やっぱり色のついていない、裸眼で相手を見た方がいいと思うんです。だからなるべくニュートラルでいようと心がけてます。結婚に限らず、どうしても先入観を持ってしまいがちになってしまうので、難しいですけどね。心がけないよりはいいかな、と。

ふたりで暮らしていく上で、心がけていることはありますか?

四コマ漫画

「ありがとう」ということばを口に出してみる

私、すごくひとり暮らしが性に合っていて、エンジョイしていたんですよ。でもなぜだかトニーの場合は、同棲前、会ってお互いの家に別れて帰るとき(なんで同じ家に帰らないんだろうか?)って思ったんです。初めて。不思議な感じだったんですよね。「一緒に、同じ家に帰ることが自然なんじゃないかな」って思った。そして暮らしてみてよかったことは干渉しないんですね、トニーは。私が、ふたり暮らしのなかでとても大切なことだと思うのは「しなくても良いのは干渉。した方が良いのは、妥協」ということ。トニーは、私が夜中にストレスが溜まって、甘いものを食べても気づかないんですよ(笑)。気づいたら「いいの?そんな夜遅くに」って言うと思うんですけど、気づかないのがすばらしいな、と(笑)。そういうところが自由で、がんじがらめにされないのがすごく楽で、こんな気がつかない人と結婚できてよかったって思いましたね(笑)。

だからこそ、普段からお互いに気をつけて「ありがとう」って言うようにしてます。言霊(ことだま)ということばもある通り、言ってみると本当にそんな気持ちになるんですよね。作ってもらったご飯があまりおいしくなくても、洗濯を頼んだらしわくちゃになっていても、それでもいちばん最初に「やってくれてありがとう」って言う。そうすると本当に"やってくれてありがたいな"っていう気持ちになるので、口に出して言ってみるのはすごくいいと思います。

なるほど、それは今日から出来そうですね。

そう、私がなるほど、と思ったことばのひとつに「しあわせとは、感謝できる心の強さである」というのがあります。しあわせかどうかって決めるのは自分の気持ちひとつ。自分が今いる状況をどれだけ感謝できるかが重要で、感謝できる人がしあわせになれる......。このことばは忘れないようにしてるんです。

結婚するっていうのは、それまで自分ひとりの人生だったのが、ふたりの人生になっていくわけだから、新しい人生なんだと思うんですよね。そこに自分のエゴがあったら二人三脚にはならない。相手に合わせる部分は少なからず出てくるから、それをお互い納得の上で行く方が、遠くまで一緒に行ける。......なんて精神論は理想的なことばかりだけど、日々の暮らしの中では舌打ちすることも多々......(笑)。ただ、「相手のことを大切に思って、この人と暮らしていきたい」って思った人だったら、自分も努力を怠っちゃいけないと思う。毎日のことだから見失いがちになるんだけど、ときどき思い出して、ちょっと優しくしてあげるとか(笑)、ちょっと自分をキレイにしてみるとか、相手の好きなものを作ってあげるとか、ね。

トニーさんと生活をともにしていくことで、日本と違うなぁとか、ここはこうして欲しいなぁ、と感じることがあったとき、その違いをどのように受け止めて、どんなふうに解決していったんでしょう。

四コマ漫画

ちょっとだけ余裕を持って
彼の言い分に耳を傾けて

日常の生活って、外国人じゃなくても細かな食い違いがそこかしこに表れるものだと思うんです。「ん?変だな」って思っても、聞いて3秒で「ダメ」って言うんじゃなく、「ちょっと彼の言い分を聞いてみようか」と、その先まで聞いてみることが大切なんじゃないかな。そりゃ、納得できないこともいっぱいありますよ(笑)。でも"常識"って世界ですごく違うんですよね。みんな、自分が教えられてきたことが"正しい"と思いがちなんだけれど、少しだけ余裕をもって相手の言い分も聞いてみて、どこを自分たちの折り合う地点にするのか、タイミングを見計らって話し合った方がいいですね。不機嫌なときに「あれもこれも」って言い出したら、むしろ険悪になってしまうでしょう? だから「どうしてもこれを今、片付けなければいけない」問題だけを言う。それ以外は、なんでもないときに「自分はこう思ってるんだけどどう?」と、否定で入らないよう言い方を工夫して、相手の気持ちも聞いて、会話することが大切だと思います。

それと、割り切ることも必要。人間って、実は意外と変われると思うんですよ。「こうしよう」って心がけていれば、きっと。「ま、いっか」でその気になるのと一緒でね。人生のそのときどきによって、"できること・できないこと"は変わると思うから、こだわりにがんじがらめになって、嫌な気分になることが多いなんて本末転倒。自分が100%の人間ではない、ということは心に留めておいた方がいいと思います。

それでは、おふたりがケンカしたときの、仲直りの方法を教えてください。これまでに培ってきたおふたりの生活の中で参考になる作戦はありますか?

四コマ漫画

お互いに自分を変えていく
努力をしていく

最初から相手を変えようって思っても無理な話。自分が変わらないと相手は変わらないので、自分が変わることから始めないと。やっぱり嫌な気持ちを3日引きずるのか、1日で終わらせるのか......。「自分は間違ってない」って思っても、ある程度は「自分もこんなふうに怒っちゃってごめんね」とか、「押しつけてたかもしれなくてごめんね」とか、少しは折れる部分が必要だと思うんです。それこそ"妥協"の部分。許せなくて別れるのか、許して一緒にいるのか、と考えてみれば、きっと「許して一緒にいる」を選ぶことの方が多いはず。そして、時が流れてしまえば「あんなことでけんかしたけど、結局そんなたいしたことじゃなかったね」と、問題自体が解決しちゃっていたり。ふたりの間にひびが入るような大きな問題に関しては、とことん話し合って結論出さないといけないと思うけれど、そこまでいかない問題っていうのは、この先、何回も出てきて、何回も乗り越えていかなきゃいけない部分。「寛容」とか「許す」ってすごく難しいことだけれど、それを結婚生活という長い時をかけてやっていくのがテーマなのかな。夫婦は、家族と違って血がつながってないでしょう? いちばん気心が知れていて、結びつきが深いけれど、本当は両親よりも切れやすい関係なんだってことを忘れないようにしています。

仲のよい結婚生活を保つ秘訣はなんだと思いますか?

小栗左多里さん

お互いが共有できる話題を提供し合って
ふたりの時間を楽しむこと

干渉されないのもひとつ。そしてもうひとつが飽きないっていうこと。それを保つには、たくさんの情報を仕入れて、"私もおもしろい!と思う&彼もおもしろいと思うんだろうな"っていうことを、話題にする。宇宙のこととか、恐竜の話とかね。いつも話題があるっていいことだなって思うんです。家庭や、仕事、育児以外で、まったく役に立たなかったり、生活に直結しない無駄な部分っていうのが、お互いに共有できる話題になるとすごく救いになるな、と思います。一緒に暮らしていると、例えばテレビで面白いことがあったときに、「ねぇねぇ、これおもしろいね!」ってすぐに分かち合えることが、すごく大きいことだと思うんですね。100%自分を肯定してくれる人だから(一応)、愚痴をこぼすにしてもおもしろいことを共有するにしても、そういう人がいてくれるってことがすごくありがたいわけで。これが"ひとりでいることと、ふたりでいることの差"だと思うんです。やっぱり、いてくれてありがとう、と思ったときに言ったほうがいい。母にも言いますよ。明日死んでも後悔しないように。「もっと『ありがとう』って言っておけばよかった」って思わないように。

最後に、同棲期間が長かった小栗さんだからこそ、相手をよく知るために、結婚前にしておくといいことはなんだと思いますか?

四コマ漫画

旅行と同棲。相手がどんな人間性かを確かめて

旅行って、もめますよね......(笑)やっぱり余裕がなくなるからでしょうかね。チケット買うにしてもいっぱいいっぱいになって、それだけでピリピリしちゃったり。彼が英語しゃべれたりすると、現地で彼に頼りがちになるから、彼も「ちょっとは自分でもやったら?」ってまたピリピリ。何かアクシデントが起きたときに、彼はどう対処するのか、自分はどうするのか......お互いが見える。旅行はいろいろ感じますよ、ぜひ結婚前に行ってみるのをおすすめします。

あと、一緒に暮らしてみるっていうのも、なかなかいいと思うんですよね。私も若いときは「よく同棲なんてするなぁ」って思ってたんですよ。ケンカしたら寝るところがないじゃん、って。でもやっぱり会うだけじゃわからない部分が出てくるから。1週間でも暮らしてみたら、たぶんね、「ん?」と思うところが、いろんなところに見えてくるはず(笑)。

それから、夢見すぎて、「結婚したら、すごく良い生活がある♪」なんて思っていると、どこかで必ずギャップが出てきます。「出逢いがない」という人も、やっぱりね、王子様は白馬には乗ってないことが多いんですよ(笑)。 馬に気をとられてると、いつまでたってもたどりつけないかな、と。その辺を歩いてるはずですから。ブルマもはいてないし、ヒラヒラもついてないですけど(笑)。

画像)©『ダーリンは外国人』(小栗左多里/メディアファクトリー)

ダーリンは外国人
著書紹介:『ダーリンは外国人』(小栗左多里/メディアファクトリー)
小栗左多里さんとトニー・ラズロさんの日々を綴った自伝的コミック・エッセイ。同棲期間を経て、入籍、BABYの誕生までシリーズ3冊が好評発売中。「国際結婚」という枠にはまらず、国籍や人種を越えて、他人と許し合うことの大切さ、パートナーとめぐりあえたことに対する感謝の気持ちなどを、日々の生活のエピソードを交えていきいきと描いた大人気作。語学オタクのトニーさんによる、「トニーのひとりごと」も参考になります。

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